リコー 神経の薬剤応答が測定可能なヒト神経薬効・毒性評価プレートを提供開始
2020年12月03日
 リコー(山下良則社長)とエリクサジェン・サイエンティフィック(米国メリーランド州ボルチモア)は共同で、神経疾患の薬剤評価にすぐ使えるヒト神経薬効・毒性評価プレートを開発した。
このヒト神経薬効・毒性評価プレートは、多点電極の内蔵されたプレート上に、エリクサジェン・サイエンテフィックの分化誘導技術により作製したiPS 細胞由来のヒト神経細胞を播種*し、リコーがバイオ3D プリンターで培った細胞接着コーティング技術で電極への接着性を向上させたもの。製薬企業や研究機関向けにこのヒト神経薬効・毒性評価プレートのサンプル提供を開始するとともに、本年度中にプレートの販売開始およびプレートを用いた新規薬剤の薬効毒性評価サービス事業の開始を目指す。
*播種:細胞を播くこと

 このヒト神経薬効・毒性評価プレートを、12 月9 日から11 日まで開催される「nano tech 2021 第20 回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」にてオンライン展示する。

 新薬開発における大きな課題は開発コストの増大です。特にヒトを対象とする臨床試験の段階に至って開発中の薬剤の毒性が明らかになると、それまでの開発コストが無駄になってしまう。臨床試験以前の段階で毒性評価の確度を向上することは、開発期間の短縮やコスト低減が可能になるため、非常に重要な課題だ。一般的に動物実験による毒性評価が行われているが、ヒトと動物の種による違いのため、正しい結果を得られるとは限らない。このため、ヒトの細胞をプレートのウェルに播種し、そこに候補薬を加えて薬剤の効果や毒性を確認する薬剤評価用の細胞プレートが活用されている。中でも神経疾患の候補薬は、臨床試験において毒性を理由に開発が中止されることが多いため、ヒトiPS 由来の神経細胞を用いた神経毒性評価系の開発が精力的に行われている。その代表的な手法が神経細胞を電極上に播種したヒト神経薬効・毒性評価プレートを用い、その電気活動変化から薬剤に対する応答性を評価する方法だ。

 ヒト神経薬効・毒性評価プレートとは、MEA(Multi-Electrode Array:多点電極アレイ)プレートと呼ばれる、各ウェルの底に微小電極を埋め込んだプレート上に、検査対象となる神経細胞を播種したもの。神経細胞の活動を電気信号として測定・記録可能。神経細胞プレートをユーザー自身が作製する場合、細胞の培養ノウハウが必要になる、培養期間が長期に渡る、細胞の凝集や剥がれなどの問題が発生するなど、大きな手間、コスト、リスクが生じてしまう。培養が不要ですぐに使える神経細胞プレートが求められているが、品質が不安定である、輸送する際に細胞が電極から剥がれてしまうなどの課題があり、今まで実現していない。
 リコーとエリクサジェン・サイエンティフィックは、細胞接着性を大幅に向上した輸送可能なヒト神経薬効・毒性評価プレートを開発しました。神経細胞の作製には、iPS 細胞を短期間で高効率に目的の細胞に分化可能なエリクサジェン・サイエンティフィックの技術を用い、電極への細胞接着や培養条件の検討
には、リコーがバイオプリンティングで培った細胞接着コーティング技術を応用した。各条件の最適化により品質も安定し、国内輸送を想定した輸送試験後においても正常な細胞特性を示す結果を得ており、お客へヒト神経薬効・毒性評価プレートをすぐに使える状態で輸送できるようになる。同成果は新薬開発のコスト/リスク低減に大きく貢献できることが期待される。

 今後は、同一の細胞を搭載するだけではなく、バイオプリンティング技術を用いて神経ネットワークを再現するなど、ニーズに応じたヒト神経薬効・毒性評価プレートの開発をすすめていく。