装幀者・菊地信義氏と本をつくる人々のドキュメンタリー『つつんで、ひらいて』12月14日より公開
2019年11月20日
 1万5千冊をデザインした装幀者・菊地信義氏と本をつくる人々のドキュメンタリー『つつんで、ひらいて』が12月14日より東京:シアター・イメージフォーラムほか全国で順次公開される。「読者が思わず手に取る美しい本」が生まれる、その舞台裏を見ることができる。本をつくる人々の情熱と知恵を追いかけ、本という表現の可能性を新たに発見でき、この映画を見た後、本屋へ行きたくなるだろう。11月19日中央区・日本印刷会館で記者発表が行われ、監督・編集・撮影の広瀬奈々子氏、プロデューサーの北原栄治氏が映画の内容やみどころを語った。
 この映画を制作しようとした動機は、広瀬監督の父親が装幀者だったが11年前に亡くなった。以前、装幀には興味を持っていなかったが、社会に出てから興味を持ち、改めて装幀とはどんな仕事かと感じたという。菊地信義氏に初めて会ったのは東銀座の喫茶店で、第一に「僕は映像が嫌いだ」と言われ、同監督はかなり落ち込んだという。しかし、1か月後、スケジュールが空いていると言われ、再会したものの、「頭に小さなカメラをついて撮ったらどうか」と言われ、厄介な人だと感じた。
 そして、『雨の裾』の制作過程から撮影が始まり、3年間かけて撮影し、編集した。手作業で一冊ずつデザインする指先から、本の印刷、製本に至る工程までを丁寧に綴り、ものづくりの原点を探る。同監督は菊地信義氏について「芸術家ではなく、裏方として自分の姿勢を貫き、素敵だと思う」と述べ、「1冊の本が出来上がるまでたくさんの人が関わっている」と感想を述べた。
 同作品を印刷や製本に関わる人々に見てもらったが、「印刷の人は製本の仕事を見たことがなく、製本の人は印刷の仕事を見たことがなく、見てわかったと言われ、励みになった」(吉永裕子氏、配給:マジックアワー)、広瀬監督も「菊地さんはあくまでも手作業で、ものにこだわり、字をものとして捉えている。まさに職人だ。見る人に対して、本は面白いということを伝えられたらと思い作った。読書という体験は改めて必要な時期だ」と訴えた。
 杉村亥一郎日印産連専務理事は「日印産連のミッションの一つに印刷の社会的役割と印刷の文化的魅力を広く一般の人に伝えていくことがある。デジタルメディアがすごく隆盛を極めつつあり、プリントメディアはだんだん減っていく。しかしながら、書籍、本は形あるゆえに素晴らしい魅力がある。この『つつんで、ひらいて』は装幀や印刷、製本の魅力を監督の目を通して菊地信義さんの装幀の活動を通して伝えてくれる。日印産連としても応援したい」と述べた。

 映画『つつんで、ひらいて』は12月14日より、東京:シアター・イメージフォーラムを皮切りに、2020年1月11日より大阪:第七藝術劇場、神戸:神戸アートビレッジセンター、名古屋:近日公開・名古屋シネマテーク、京都:近日公開・出町座で順次公開される。
 また、同映画の紹介記事が雑誌『家庭画報』12月号、『リンネル』1月号に紹介されている。

■菊地信義氏
 1943年東京生まれ。1965年多摩美術大学デザイン科中退。広告代理店などを経て、1977年装幀者として独立。空前のベストセラーとなった俵万智『サラダ記念日』をはじめ、大江健三郎、古井由吉、浅田次郎、平野啓一郎、金原ひとみなど1万5千冊以上の装幀を手掛け、40年以上にわたり日本のブックデザイン界をリードしてきた稀代の装幀家。
■広瀬奈々子監督
 是枝裕和・西川美和率いる映像クリエイター集団「分福」に籍を置き、柳楽優弥主演『夜明け』で鮮明なデビューを果たし、今回で第2作目。


 『つつんで、ひらいて』ポスターを手に
左から広瀬奈々子監督、北原栄治プロデューサー