日本経営協会 「若手社会人就労意識ギャップ調査報告書2016」まとまる
2016年07月25日
 一般社団法人日本経営協会(東京都渋谷区、浦野光人会長)では、「ゆとり世代」と呼ばれる若手社会人が、就職後に感じた組織や職場に関するギャップや、就労に関する考え方の変化などを明らかにするために、第2回若手社会人就労意識ギャップ調査を実施し、その結果を『若手社会人就労意識ギャップ調査報告書 2016』として取りまとめた。

●調査内容
新卒社(職)員の3人に1人が3年以内に離職する昨今、苦労して採用した若手優良人材を定着させ、将来のコア人材として育てるために、リテンションマネジメントは企業(団体)にとって喫緊の課題となっている。
今回の調査では、対象をいわゆる「ゆとり世代」の20代の若手社(職)員に限定して、就職や仕事に対する意識、社会人になって感じたギャップ、キャリアデザイン、ワーク・ライフ・バランス等、就労や人生設計にあたって彼ら(彼女ら)がどのように感じ、考えているのかについて、5群、19項目の設問を用意して、その実態に迫った。

調査では<就職活動と入社(職)後のギャップ>の他、<キャリアデザイン><転職志向><理想の職場と就労意識>などについて質問した。詳細は以下のとおり。
●調査対象と方法、有効回答数
大学・大学院・専門学校等を卒業し、就職して2年半~3年半経過した正規雇用者を対象に、WEB調査により5月下旬に実施した。有効回答数は668件。

調査結果概要就職活動と入社(職)後に感じたギャップ                       
◎ゆとり世代の若手社会人は精神的・物質的な安心感の中に身を置きつつ、やりたい仕事をしながら実力を蓄えようとしている傾向がある

◎学校を卒業して最初に就職した会社の就業環境は想像していたより快適(良い方向のギャップ)。でも、給与やキャリア形成といった会社(団体)から得られるものは期待していたほどではなかった(悪い方向のギャップ)ようだ。この結果は「ゆとり世代」の社(職)員のやる気やリテンションを考える上で重要。

キャリアデザインについて
◎半数以上がキャリアデザインを持っていない。2012年の前回調査に比べ、男性は「持っている」が7.3ポイントアップしたが、女性は変化が見られなかった。また、女性は昇進(昇任)意欲も男性に比べて低いようだ。女性活躍推進が叫ばれる中、キャリアに対する女性の意識はあまり変化していないようだ。

◎キャリアデザインを持っている人は持っていない人に比べて就職に際して情報収集・研究を熱心に行っている。このこともあって転職してからの悪い方向のギャップが生じにくいとの結果だった。

◎4割強が「昇進(昇任)したくない」と回答した。前回調査に比べて8.5ポイント増加しており、全体的に昇進(昇任)志向の低下が認められる。なお、キャリアデザインの有無および就職して感じたギャップは、昇進(昇任)志向に影響を与えている。(キャリアデザインを持つ人の方が昇進(昇任)志向が強いようだ。)

転職志向について
◎半数近くが再度就職活動を行えるとしたら就職活動すると回答した。若手社(職)員の転職志向は前回調査時よりも高まっている。

◎転職経験がある人は27.1%、転職経験はないが転職の意思を持っている人は39.5%であり、合わせて66.6%。3人に2人は転職経験者か機会があれば転職したいと考えており、その際に重視するポイントは給与や福利厚生。

◎転職の際に重視するポイントでは「給与・福利厚生が良い」が1位(44.2%)で、入社(職)時の水準の2倍以上となった。就職後に感じたギャップの1位が「給与面」であったことにも表れているように、給与における不満が転職に直結するケースが多いようだ。

理想の職場と就労意識について
◎モチベーションが下がる理由の1位は「職場の人間関係が良くないとき」(39.1%)であり、どのような職場で働きたいかの1位は「人間関係や雰囲気がよい」(63.0%)だった。職場における人間関係の良し悪しがモチベーションに大きな影響を与えてる。

◎職場の上司に要望することでは、仕事の指示命令・OJTや仕事の配分に関することが多くなっている。若手社(職)員は、親切丁寧にOJTをしてもらえ、自分の意見も言いやすい居心地の良い職場で、ミスや無駄を避けて効率的に働きたいと思っている。

◎処遇については、どちらかと言えば、「年功序列」より「実力主義」を好ましいと感じている。また、約3割の回答者は入社(職)後に考え方を変えているが、その中では「年功序列」から「実力主義」へ変化した人が多くなっている。この変化にも入社後に感じたギャップが影響を与えている。

特性と能力について
◎自分たち「ゆとり世代」については、人と争うことを好まず、自分に対して素直で、個性豊かな人で、わかりやすく説明されたり、指示されたりすることを好むと自認している。

◎勤務先が求めている能力と自分に不足していると思う能力では、「主体性」と「実行力」については合致している。一方「状況把握力」と「ストレスコントロール力」についてはギャップがあります(若手社(職)員はそれほど不足を感じていないが、組織側からの要求順位は「NOMA人材白書2015」によれば高くなっている)。

◆提言◆
1.学校のキャリア教育と企業(団体)のキャリア開発支援の充実
キャリアデザインを持って就職活動する人は、就職後に悪い方向のギャップが生まれにくいため、(キャリアデザインを持っていない人に比べて)転職志向が低く、昇進(昇任)意欲が高い傾向がある。この点から見て、
①義務教育から高等教育までの各段階で職業やキャリアを意識したプログラムが導入されることが望ましい。
②企業(団体)においては、採用時にキャリア意識・志向を確認することや、入社(職)後に個別キャリア育成計画を作成し、定期的に見直すことが望ましい。

2.ギャップを生じさせないための工夫
入社(職)前のイメージと実際の職場との間でギャップが生じる原因は、学生時の情報収集・研究不足だけでなく、企業(団体)側の情報提供の方法や質にもある。苦労して採用した優秀な社(職)員が早々に離職してしまっては費用対効果の面ではマイナス。もちろん、厳しい競争を勝ち抜いて入社(職)した若手社会人自身にとってもマイナスと言える。現実の会社(団体)生活とかけ離れたイメージを与えない(持たれない)ことが大切です。特に給与に関する誤解は転職に直結しやすいため、採用段階での情報提供と確認は必須。

3.「ゆとり世代」の特性を生かした人材育成・確保
<競争を好まない><素直><個性豊か>などの特性を持つ「ゆとり世代」の社(職)員は、職場の人間関係に敏感。周囲の人間から親切・丁寧なOJTを受けながら、その中で自分の個性も主張できるような環境を望んでいる。この世代の社(職)員を生かすため、そして安易に離職を選択させないためにも、採用に当たって彼ら(彼女ら)に適切に情報を提供すること、また彼ら(彼女ら)も仕事に就くことの意味をしっかりと考え理解することが必要。こうすることで、これまでと異なった環境(年齢や経験の違う人間と共に仕事をすること)に身を置く中で、若く柔軟で素直な彼ら(彼女ら)は少しずつ変化・成長していく。
なお、「ゆとり世代」に限らず、若手社(職)員が過信や自信不足、不安に陥らないよう、自身についての客観的な能力診断を可能にする機会を提供する等、組織としてのバックアップに注力したいものだ。

4.女性の活躍推進にむけての体制づくり
女性の活躍推進については国家的プロジェクトとなっているが、今回の調査から見るところ、女性の若手社(職)員のキャリア意識、昇進(昇任)意欲、就労意識は男性との間に明らかな違いがある。同会が2015年度に行った「女性躍進に関する調査」においては、20代女性は入社(職)後に昇進(昇任)意欲が増す傾向があるという結果が得られている。企業(団体)はこのことを踏まえて、人事・人材育成制度や組織・職場風土の醸成などを通じて、組織として女性の活躍を全面的にバックアップすることが望まれている。