ミューラーマルティニ・ジャパン アレグロ、バレオの新機能を初公開
2015年10月06日
ミューラー本社からブルーノ・ミューラーCEOを迎え記者会見
デジタル対応の在り方示す多種少量生産への対応策

 IGAS開催初日の9月11日、デジタル時代に求められる小ロット、短納期、高品質要求に製本綴じ機の分野から支援システムを提供するミューラーマルティニ・ジャパン(社長:宮崎靖好氏)の記者会見が、ミューラーマルティニグループのチーフエグゼクティブオフィサー、ブルーノ・ミューラー氏を迎えて開催された。厳しい状況に置かれている印刷・製本産業の動向を踏まえて、ミューラーマルティニがどのように対処するのかを示した。
 IGASに日本の品質を追求した全自動中綴じシステム「プリメーラ・ジャパン」、新発想の全自動無線綴じシステム「アレグロ」、高効率のワンオフ無線綴じ機「バレオ」の3機種を出展した同社ブースは、投資効率の高い機種性能を確認する来場者で連日賑わった。
 日本市場で初公開となった「アレグロ」と「バレオ」が注目された主な概要は次の通り。
 ■アレグロの注目点
 ▽MC技術を最大限に活用できるように設計された初めての無線綴じ機で、発表以来世界市場では80台を超える販売実績を示している。その根拠となったのは毎時7千回転のバインダーで、小ロットから大ロットまでカバーしている点で、ギャザリングマシン、トリマーも同様の設計仕様になっている。
 ▽運転中に自動的に個別の本の厚みのセットが可能であり、本のサイズ変更、厚みの変化幅も大きく、さまざまな製本仕様に切り替えることができる。
 ▽頑丈な立体フレームに支えられており、そのおかげでとても精密で正確な設定を実現する。
 ▽MC技術は、駆動部品やチェーンを減らし、損耗を抑え、繰り返しの設定の精度を安定させる。こうした正確な設定ができるからこそ、仕事データを使い、立ち上がり損紙なしの生産が可能になる。
 ▽究極のゴールは最初の一冊から販売できること、あなただけの本を作るのには、これは必須条件になってきている。
 ■バレオの注目点
 ▽ミューラーマルティニにとっては一番小さくパワフルな働きをするバインダー。最高毎時1350冊で、幅広い製本仕様を提供し、大きなサイズや厚み変化に対応し、ニーズに合わせた構成が可能となる。PUR製本、あるいは寒冷紗も取り付けができる。
 ▽「3クランプ・非同期駆動」というユニークなMC技術がそれぞれの工程の処理時間を効率的に運用する。クランプごとにサーボモータが付いているので単独駆動になっており、効率よく生産できる形になっている。
 結果として、①3つのクランプがそれぞれ最適なスピードでサイクルし、非同期運動をすることによっての高生産を可能にする。②安定したフィード、クランプは停止・移動を繰り返し、紙を入れるときには当然クランプは停止しているため非常に安定しているので、損紙の減少、機械が突然止まっても損紙の発生がない。③高いクオリティ、例えばプレス時間、紙を止めてプレスで打って何秒止まるかの設定ができるので、非常にいいプレスの成形ができる。
 ■MMサービス技術についての注目点
 ミューラーマルティニのマシン稼働を支援するさまざまなアフターサービスを提供するもの。現地サービスの重要性を十分に理解し、経験のあるサービス技術チームへの継続支援と投資を行うもの。
 この点についてブルーノ・ミューラー氏は「世界のマーケットと比較して日本のマーケットに関して一つだけはっきりしていることがあります。日本市場は非常に高い品質要求、高い信頼性への期待、そしてコスト効率へのあくなき探求を示しています。ミューラーマルティニは日本を大変重要なマーケットであると認識し、日本のお客さまに信頼されるパートナーとして、ここで活動を続けていく」と語っている。


IGASおよびdrupaへの出展機の取り組みを語るミューラーマルティニのブルーノ・ミュラーCEO㊧とミューラーマルティニ・ジャパンの宮崎靖好社長㊨

3年周期のdrupa出展機はどうなるか
稼働中に製品切り替えが可能な機械
今後はdrupa向け開発はしない

 記者会見質疑応答の中で、ブルーノ・ミューラー氏はdrupaへの出展機種に触れて次のように述べて注目された。
 ミューラーマルティニはすべての製本仕様について最新の機械を出展します。すべての製本仕様というのは、中綴じ、無線、上製の3つのカテゴリーについて最新の技術をお見せしたい。デジタル印刷を意識したショートラン、ロングランに対応する機種です。
 これまでdrupaに向けて機械を開発してきたのですが、今後はdrupaに向けての開発はしないというのは明らかです。そのときのマーケットに合わせた機械を作って、drupaのタイミングで発表できるものは発表する。そういうスタンスに、私どもだけではなくて他のメーカーも含めて変わっていくのではないでしょうか。drupaに合わせて新しい機械を開発していくほど、私どもも含めてメーカーは、それほどの原資を持って計画的にお金を使える状況にはない。そういう状況になっていると私は思います。drupaが3年周期になることからも、この3年は機械を開発するには短いといえるでしょう。
 展示するものは、外観が、例えば無線綴じ機であれば無線綴じ機のように見えるし、中綴じ機は中綴じ機のように見える外観ではあると思います。ただし、実際に製作して製品として出てくるものについては、ずっと運転しながらも違うタイプの製品を連続的に出していけるという形のものになるのではないか。そういうものを今後のマーケットは求めていると思っています。同じものを大量に作る機械ではなくて、機械を回しながら違うものを切り替えながら作っていける機械が、今、求められている機械ではないかとわれわれは考えています。

ブルーノ・ミューラー氏「製本業界の未来は何処へ」
世界の書籍印刷物は1m幅の
ウェブで地球を1500周

 私たちの産業は、いまだに需要の掘り起こし、あるいは市場シェアの保持、利益の確保のために大変苦しんでいる。印刷物とデジタルメディアが共存し、お互いに補完し合うという考え方は、ゆっくりとですが世界的に浸透し始めている。印刷物は、その利用者である読者、あるいは広告主たちに独自の魅力を提供している。この独自の魅力をさらに増大させることこそ、ミューラーマルティニが全力で目指しているところであります。欧州の印刷産業の調査会社パイラ社による2018年までの印刷需要の変化予測によると、書籍、新聞、カタログ、雑誌の4つの印刷マーケットが世界の市場に占める割合を示しています。
 北アメリカ、あるいはヨーロッパといった、いわゆる成熟市場においては減少傾向が顕著です。特に書籍が減るという予測になっています。しかし、アジアやアフリカでは今後の成長が予測されています。印刷の力強い伸び、アフリカ地域の書籍、カタログは上昇するということですが、それでも現在のマーケットシェアは書籍で1%くらい、カタログで6%くらいと、ほんのわずかなシェアになっています。日本についても、やはり先進国と言われているアメリカやヨーロッパと似たような傾向が示されています。縮小する市場で活動するのは大変難しいことです。しかし、縮小しているマーケットが必ずしも悪いということではないと私は考えています。
 2014年の世界の印刷マーケットの大きさを測ってみました。A4ページ換算で42・2兆ページと言われています。この数字を仮に連続紙、1メートル幅のウェブが両面印刷されているという状況を考えたときに、これが地球を何回巻けるかとして計算してみると、1年間の世界の全印刷生産量は、地球を1メートルほどのウェブが3万3千周回できるくらいの量、これがまさに今日の印刷量の全体像であります。仮に書籍印刷のみをここで取り上げてみましょう。書籍印刷に限っても、表裏印刷した1メートル幅のウェブは1年間に地球を約1500周しており、これはかなり大きな数字ではないかと思います。
 これはとても大きな市場だとわれわれは考えています。お客さまがこれら大量の印刷を使いやすい素晴らしい製品、つまり書籍や雑誌、新聞、その他のさまざまな印刷製品に仕上げるときに、それらをお手伝いするためのベストなマシンとベストなサービスを提供するためにミューラーマルティニは最大限の努力を惜しみません。
 日本の印刷マーケットボリュームがどの程度か、昨年1年間に印刷された印刷量は、1メートル幅の連続紙、表裏印刷と仮定すると、日本全体で地球を2600周回するくらいの量です。書籍印刷のみに限っても1年間に地球を約85周回する量の紙に印刷されています。

多様なメディアの切り替えで
スイッチのような働きを提供

 世界で起きるさまざまな流れに影響されて印刷・製本産業は変化していきます。これまで、こうした変化はさまざまな要因、特に私が今回触れたいのは経済的な理由、あるいは市場における過当競争のプレッシャーによって加速されてきました。付け加えて環境負荷への憂慮、世界経済がネットワークで常時つながってしまっている状況、あるいは情報量の急拡大によるオーバーロードという3つが、さらに新たな変化の原因となる代表例として、私はここで触れておきたいと思います。こうしたさまざまな要因の影響を受けて印刷、特に従来型の印刷市場は縮小を続けています。読者や広告主に高い価値を示すことが印刷を元気にするには絶対に必要です。コンテンツの品質、外観、出来栄えがさらに重要性を増してきます。新しい印刷製品の種類は増えていくと思います。しかし、平均すると、同じ印刷物の量は減っている傾向があります。最小ロットが減少して結果的には一部まで行ってしまうのではないでしょうか。ただし、どのマーケットにおいてもハリーポッターのようなトップセラーは今後も存在しますから、ロングランがなくなるというわけではないと思います。
 デジタル印刷はターゲット志向のカスタムな印刷物を得意とし、一方オフセット印刷はより大きなロットや高い品質の生産を担っていくことになると思います。そして、結果として2つの印刷技術は今後も共存していけると考えています。メディアもお互いの力を強めるためにさらに進展していくものとなるでしょう。バーコードやQRコード、画像認識、あるいはRFID、無線認識などのインテリジェントリンクは、多様なメディアの切り替えスイッチのような働きを提供していくことになると思います。

適者生存、環境に適した
進化する者のみが生き残る

 このように変化を続けるマーケットの中で生き延び、かつ世界的な景気低迷と戦っていくことを考えると適者生存、環境に適した進化をする者のみが生き残るという意味ですが、適者生存となるのが必須だと思います。さらなる整理・統合は、その結果にほかなりません。
 ミューラーマルティニは、機能や速度の異なるエントリーレベルから最高速機まで幅広い製品ポートフォリオを提供しています。これらは、中綴じや無線綴じ、上製や新聞製作まで、さまざまな最終製品をカバーします。ミューラーマルティニのすべての製品は、デジタルレディとしてデジタル印刷との連携を前提に設計されています。ミューラーマルティニのMC(モーションコントロール)技術、「コネックス」ワークフローシステム、制御系の共通化されたプラットフォーム、機械のモジュラー設計方針などが、変化するマーケット状況に将来対応するために非常に有効になります。あわせて、現在稼働しているマシンのサポート継続も重要になります。私たちは、これらをまとめてインベストメントプロテクション、投資の保護を重要な責務と考えています。


初の公開運転となる「アレグロ」

(印刷タイムス 2015年9月20日号掲載)