マーケティング時代の「印刷営業手法」
2015年05月14日




新手法「デジタル×DM」の誕生でO2Oマーケティング市場へ
マーケティング時代の「印刷営業手法」

「プレJP」での花井秀勝氏講演から部分採録

 印刷料金の値下げ傾向が下げ止まりつつある。この傾向を自らの経営戦略によって維持向上させる機運が、新市場創出策として反映され始めてもいる。社会経済における購買動向に少なからず関与する提案営業の糸口として、ダイレクトマーケティング戦略の考え方や取り組み方に関心が集まっている。
 3月17日に太閤園で開催された「プレJP」で、フユージョン株式会社花井秀勝代表取締役会長が「いよいよ始まる印刷とネット通販・マッチングビジネス」と題した講演会に大きな反響が寄せられたことに反映している。
 今回、同日の1時間におよぶ花井氏講演から、主要部分を抽出して、印刷営業に占めるマーケティング活動とはどのようなことなのか、なぜ重要なのかに焦点を絞って紹介することにした。
 「JP2015情報・印刷産業展」の中日15日午後1時から、聴講無料のオープン講座として実践編「クライアントの視点から思考する印刷と販促マーケティング」と題したセミナーで再講演を開催する。


DM「通販カタログ」の動向と課題

 アメリカのネット通販企業は、やり取りはeメールだけではなくダイレクトメールやカタログを使います。高級ブランドを扱うネット業者、高額トラベラーを扱うネット業者は、優良顧客には紙メディアを送付し、既存客へのコミュニケーションはeメール、もしくはメルマガで済ませています。ダイレクトメール、ダイレクトマーケティング、最終的にはB2B2Cです。企業から仕事をもらって最終エンドユーザーに届くものを作る。今日のテーマは通販ですが、通販は15年連続で市場が伸びています。
 しかしその方向では、デジタル×DMという新しい手法、いわゆるO2Oのマーケティング市場に入っていきます。従来のような印刷の作り方、原稿のやり取り、同じものを複製するのではなくて、付加価値を上げるクロスメディアの中の印刷物を提案しなければならない。DM、Web、ソーシャルネットなどとの組み合わせが重要になってきます。課題は発注者側は印刷の知識が不足していること。そして受注者側の印刷会社はダイレクトメール印刷などは守秘義務契約が重要になります。成功・失敗事例の企画書閲覧顧客情報のデータ預かりなどに関する契約です。
 お預かりする得意先の顧客情報と商品情報などの社内管理体制です。それからデータベース用語、Web用語の理解。印刷会社の営業はここが弱いです。言葉が通じない、担当者からすると、言っている意味が理解できない。例えばSQLとは何ですか。
 それとROI(投資対効果)、CPO(注文獲得単価)、またWebの分析用語です。こういったことを覚えなければならない。


法改正・規制緩和とビジネスの変化

 次は法改正、規制緩和、まずは農協法の改正。これが印刷とどう関係があるのか。今、国内には約700の農協があります。その中にいる各農家さんは直販をやりたい方が多く、農協を通したくない直接の取引を望んでいます。農家からの発注は通販カタログ印刷とWebで増え始めています。
 地方創生関連法観光立国推進基本法なども関連しています。
 マイナンバー法、銀行法の改正などで印刷物がいろんな形で大量に出てくる。パーソナルデータの利活用に関する制度改定法案が2日前に国会に提案されました。オープンビッグデータと企業データがリンク、解析・分析で販促物が非常に増えてきます。
 今のところ、2017年度ということでほぼスタートが決まりました。ということは、今までの印刷物との作り方とは大幅に変わってきます。ようやく、日本の法律が変わることによってデジタルプリントの出番になるのです。
 印刷会社からの視点で思考すると、顧客をきちっと識別して販促施策と連動させる。例えばデパートでは、年間100万円以上買う顧客と年間10万円しか買わない顧客に、今までは同じ額の販促費をかけていましたが、これからはそういうわけにはいかない。
 100万円買う顧客の販促策には3万円かける。10万円しか買わない顧客には2千円でよいのではないか。こういった話が、各大手の流通系、百貨店がわかり始めてきました。当然ながら、従来のような印刷物の作り方は難しくなる。顧客別に販促を変えていくことになります。
 それと継続客、離反客の対策と新規顧客の開拓。離反客を防ぐためには、ダイレクトメールはいつごろ出さなければならないのか。メルマガはいつごろ送ればよいのか。タイミングが分かり始めてきました。金額によって、商品によって、すでにある程度のところはデータが取れています。それに対して制作物をつくるのです。
 そうすることで従来の印刷物が本当に顧客にフィットしているのか、という見直しが始まります。それを見て買い物行動を起こすのか、注文をするのかということです。今はやっているのがリバースエンジニアリングという手法です。対象が50代以上であれば、文字の級数を今よりも2級上げる。色彩を明確にするなどいろんな形があります。これを変えるだけで、すでに百数社の売り上げが上がりました。新聞折り込みも同じ手法でやります。
 ネットのサイトしかやっていない発注者が印刷をいきなりやりたいとなったら、印刷の作り方、仕組みがよくわからない。納期がどのくらいかかるのか。そういう問題も想定しなければなりません。
 日本郵便が進めるワンラインという仕組みでは、販促に必要なDM制作、発送、宛名入力、受注処理まで、すべてお任せくださいという方式を打ち出しています。小規模農家、農園、小規模生産者向けの通販サービスです。これを昨年からテスト的に始めています。農協法が改正されるので農家を攻めようという話で、日本郵便が始めました。
 どうするかというと、今までにいろんなところから注文が来た送り状があります。これを鹿児島の印刷会社さんが扱って、約1万枚の伝票を入力してデータベースを作って、過去にいくらのものを買ったか、ダイレクトメールを送りました。そうすると、一番注文が多かったのが近畿地区だったこともわかりました。有名なお菓子ですが、地方発送をしています。その後、Webも作りたい。あれもこれもやりたい。
 これを作るのは日本郵便ではなく、JPメディアダイレクトです。日本郵便と電通とで作った広告代理店が仕切っています。そこに対して、地区で手を挙げた印刷会社がタイアップして受注しています。
 ネット通販と実店舗、今後はさらに補完関係を強めて融合していく。今までネットだけでやっていたところが、実店舗を使って実際に商品を見せるような方向です。
 これからはネット通販のデータを見ながらメーカーが主力商品以外の商品、関連商品や非関連商品を直販していこうということです。メーカーがダイレクトマーケティングの世界に入っていくということです。今後ますます増えるでしょう。チャネル化という言葉やO2Oという言葉が使われたりします。
 ダイレクトマーケティングとは、企業が広告媒体を使い顧客と直接かつ継続的にコミュニケーションを図ることで、レスポンスがはっきりと取れるから、ここにどんどん移行しています(図1)。


ID付データベース利用の販促施策

 個人情報とひもづいたデータベースと販促の仕掛け、顧客識別の重要性と多品種・小ロット、年間販促と効果測定について説明します。新規客を獲得するのは困難、獲得費用が高い、でも必要。いろんな仕組みが考え出されています。
 最も価値のある新規顧客、既存の贔屓客は離反することは数少ない。初回客の離反は50%以上。データでは、1回買い物に来て、その後2回目は来ないのは半分以上だと言われています。ここに対してどういう施策を打っていかなければならないかということです。一般的に、IDの番号に基づいて属性、JANコードで管理された商品と金額、数量。これは通販もほぼ同じです。誰が、いつ、何を、どのくらい買ったのか、顧客マスターを整理していく。
 一般的に、お客さんは売上をアップしたい。客数×客単価=売り上げですが、売り上げをアップするにはいろんな細分化した施策が必要です。同じ客数でも、新規客を集める施策、既存客、上位顧客に対する施策、中位・下位、休眠会員、これだけでも印刷物の作り方、中身が変わってきます。
 利用回数のアップ、1回あたりの購入点数を上げたい。商品単価をアップしたい。お客さまは売り上げをアップしたいと言いますが、どこを上げたいのかをきちんとヒアリングしないと印刷物の作り方を間違えてしまいます。従来の同一の販促物では反応率が悪いから、どんどんやめていく。実際、7、8年前まではほとんどがそうでした。今でも印刷会社の3分の1以上は従来型の印刷をしていて受注を減らしています。大量に作るからです。
 来店施策用の印刷物は上位・下位、休眠会員などに対して、色々な特典を盛り込み粗品を入れたりアンケートを入れたり、利用回数であればスタンプラリーや複数クーポンをつけたり、単価アップにはどうするのか。離反防止策、顧客の育成、個人情報、アドレスを取る場合はどんな施策を打たなければならないか。それ以外に、インターネット上でツイッターやフェイスブックをどう活用していくか。
 お客さまは今回どこにフォーカスを当てているのか。それを理解してよいものを作っていくということ。これがきちんと理解できないと、次の新しい印刷の市場には入っていけません。こういうところをきちっと見極めることが重要になってきます。
 これから人口減少世帯、人口が減り、今は、世帯数は横ばいですが、2017年から世帯数も減ってくると予測されています。そのためにはどうしても年間販促計画を一緒になって考える。これが必要です。年間、もしくは四半期ごとにきちっと計画を立てなければならない。
 ダイレクトメールはレスポンスが取りやすいので、欧米、特にアメリカでは日本の約8倍のダイレクトメールが家庭に送られて来ます。日本の市場はまだまだ増えるだろうというのが大方の予想です。ネットだけでは難しい。売り場の在り方も変えていく。こうなるといろんな知識が必要です。
 これは今年2月末に日本ダイレクトメール大賞で金賞を獲得した会社の事例です(図2)。会員とのコミュニケーション強化ということで、1回目の購入客を2回目にどう呼ぶか。新規で買ってくれたお客さまに38日目に届くサプライズ、「ミツバチの日」としてダイレクトメールを出しました。
 大手のGMSや、ドラッグストアは、初回客、1回目の購入者にお礼状を書いています。アメリカではサンキューレターと言いますが国内ではありがとうレターと言います。
 皆さんが、A社から数百万円の印刷物を受注しました。受注するとお礼状を書いていますかということです。このたびはカタログのご注文ありがとうございます。これからミスをしないように、いつまでに校正を出します。こういった簡単なお礼状を書いていますかということです。基本的にコンシューマー、印刷はビジネスです。コンシューマーを対象にしたときは、そこが重要だということです。これは万国共通です。感謝の気持ちがいかに重要かということです。それによって必ず数字は上がってきます。(2015年5月14日号掲載)