大阪府印刷工業組合 60周年記念事業で示した今後10年へのあるべき姿
2015年06月10日


大阪府印刷工業組合 60周年記念事業で示した今後10年へのあるべき姿
魅力ある業界づくりを怠るなら、支持する人はいるだろうか

情報発信者に寄り添うコンテンツメーカーに
社会と産業における変化と
多様性に注目して対応図る

 昨年7月に創立60周年を迎えた大阪府印刷工業組合(吉田忠次理事長)は5月22日、大阪市中央区のホテルニューオータニで来賓をはじめ、組合員や関連業界から452人の参加を得て60周年記念講演会・記念式典・記念祝賀会を挙行した。
 印刷業界を取り巻く環境がここ10年間で大きく変化し、需要の減退や消費者ニーズの多様化、急進するIT・メディア媒体の登場によって大きな転換期に差し掛かっている。同工組は今後の印刷業が目指すべき方向性として「製造業」から「サービス業」への業態変革の重要性を示しながら、厳しい現状にあっても業界が一体となって常に前向きに躍進する必要性を組合員に訴えかけてきた。
 今回の60周年記念事業では、「未来への礎~2015大印工組の新たなスタート」をテーマに設定し、実行委員会が一丸となって10年後の変化を見据えながら、「未来に向かって躍進する印刷の実現」「次世代が夢と希望を抱く業界であり続けるそのための礎づくり」を事業の目的として、さらに飛躍することを誓う場となった。
 記念式典に先立ち記念講演が行われた。60周年記念事業実行委員会の作道孝行副実行委員長は「印刷業界を取り巻く環境は転換期にあり、組合のあり方も変わってきた。組合員企業が存続していくための新しい仕組みづくりや人材育成に力を入れなければならない。
 次世代が夢と希望を持てる礎づくりを目指すとしても、これをやれば正解という安易な解決策はない。ともに悩み最善の方法を模索してこの厳しい時代を乗り越えていきたい」と開催趣旨について示した。
 このビジョンを具現化するために今回の記念講演会では、川口盛之助氏(盛之助代表取締役社長、日経BP社未来研究所アドバイザー)を講師に招き、「2020年、産業界はこうなる。~日本企業は何で食っていくのか~」と題した講演会が行われ、社会と産業における変化の多様性を学んだ。
 引き続き行われた記念式典では、吉田理事長のあいさつに続き、来賓を代表して近畿経済産業局産業部長の戸田美和、大阪府商工労働部長の津組修、全日本印刷工業組合連合会会長の島村博之の3氏が祝辞を述べた後、表彰式が行われ、過去10年に理事長・副理事長を歴任した人々をはじめ、同工組の発展に寄与した個人・企業を表彰した。
 最後に大阪青年印刷人協議会のメンバーらが中心となって企画・制作した未来の印刷業に向けたメッセージビデオが流され、現在までの足跡を辿りながら先人に思いを巡らせるとともに、印刷業界発展に寄与した人々の功績を称え、今後も社会や会員企業から必要とされる組合であり続けるための決意を示した。
 また、記念祝賀会では吉田理事長のあいさつに続き、国土交通副大臣・参議院議員の北川イッセイ氏と近畿地区印刷協議会会長の水落充氏が祝辞を述べ、近畿印刷産業機材協同組合の加貫順三理事長の発声で乾杯した。


夢が持てる印刷業の未来を次世代に
地域活性化リーダーを目指す
大阪府印刷工業組合 吉田忠次 理事長

 60周年記念式典では、開会に先立ち吉田忠次理事長があいさつに立ち、変化の激しい時代にあって、印刷業が今後進むべき方向について、コンテンツメーカーとして歴史に裏付けられた技術と創造力を活かし、さらなる発展を目指すこと、組合員が一丸となって未来に向けて課題解決に果敢に取り組み、社会から必要とされる組織に成長していくことの必要性を参加者に熱く訴えかけた。
 社会から必要とされる組織であり続ける
 人に寄り添い、情報に寄り添い、私たち印刷人は「ものづくり」を極めてきました。
 これからの印刷業の10年後、あるべき姿については、2014年に全印工連が発表した「印刷道」において、2020年に向けた印刷業の進むべき方向が示されています。
 この中で「印刷物」を作るのではなく、情報発信者に寄り添い、「コンテンツ」の魅力を最大限に引き出す「情報伝達物」をつくるソリューションプロバイダーとして印刷業を位置付け、その取り組み事例などが紹介されています。
 地域経済に密接に関係する私たち印刷業は言い換えれば地域の活性化なくしては語れません。地域活性化の大きな基盤は、交流人口拡大であり、私たちの町、大阪は大きな潜在的力を秘めています。
 「観光立国推進基本計画」の効果もあり、2013年度には初めて外国人観光客の数が1千万人を超え、2014年度は1340万人となり、大阪においても430万人にも上っています。
 これは無形文化財として登録された「和食」「和紙」、そして食器や伝統工芸品などの職人技、アニメやマンガのサブカルチャーなどに代表されるジャパンコンテンツが世界各国で支持され、空前の日本ブームが起こっているからです。今後も日本に感動体験を求めて訪れる観光客は間違いなく増加するでしょう。
 私たち印刷業は「コンテンツメーカー」であり、「情報発信者に寄り添う存在」として、歴史に裏付けされた技と創造力、斬新なアイデア、繊細な気遣いなどの特徴を持っているのではないでしょうか。
 その特徴を活かしながら来日する外国人観光客に向けて「五感に触る感動」「心に触る感動」にフォーカスを当てた感動体験を私たちが顧客と共に演出していかなければなりません。このような活動が地域活性を現実のものとしてくれるのではないでしょうか。
 「印刷道」はもとより将来の印刷業を考えるキーワードは身近な日常生活の中に存在するのかもしれません。
 一方で、組合という組織が組合員や社員、家族から見て「魅力的な組織であり続けられるのか」という問いかけを考えた場合、60年と言えば、人間では還暦、還暦を迎えた組織が、これからも必要とされるためには「未来に向けて果敢に課題に立ち向かい、さらには業界のみならず社会から必要とされる組織」に成長しなければなりません。
 そのためには、目的を同じくする同志が集う組織であり、その目的を常に確認する議論は避けて通ることはできません。
 世間や組織への迎合ではなく、われわれの存在が印刷業界に留まることなく、社員はもとより、地域経済の活性化リーダーとして社会からも望まれているのかと向かい合うことを意味しています。
 私たちがビジョンを描き、掲げ、公益活動を磨き、そして魅力ある組合、業界にするべく活動を怠るようであれば、一体誰が私たちを支持し、組合員も所属する意義を見出すのでしょうか。
 同志が集うか否かは、われわれが印刷業界や社会が抱えている課題や問題を的確に捉えるだけの知識や見識を持ち合わせ、その解決に向けて大きくメスを入れる強い意志と実行力を持ち合わせているかにかかっています。
 このことが組織の継続・発展の核心です。次世代に向けて私たちを育てていただいた印刷業界やそして組合を、夢が持て、そして実現ができる場所として健全に引き継いでいく責務があります。
 60周年を期に未来への礎、そして新たなるスタートとして位置付け、「常に新しいことに挑戦し」、魅力ある組合組織として次世代へとバトンを引き継いで参りたいと考えています。これから5年後、10年後も一層のご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。(2015年6月10日号掲載)